「定住促進」はどこでも大変な問題ですが [事業仕分け]

7月19日(火)

おとといの日曜日に参加した「構想日本」の事業仕分け。その中で、最初に参加した、中国地方のある市の施策「定住促進対策事業」について、お伝えしたい。(当日使用した「事業シート」は、実際に実施中の事業なので、回収されましたので、私のメモから振り返りました)

合併で増加した周辺過疎

この事業はH18年からH市で実施されている事業です。H市は、元のH市に、H17年周辺の7市町村が合併して出来ました。編入された周辺町村の人口減少が進んでいます。ここ5年間で4,000人の減少、1年間に800人が減っています。そういったことを背景に市の遊休資産である貸家の「空き家対策」としての施策です。

H市から研修に参加している職員が「説明員」になり、概要説明(プレゼン)がありました。それによると、

事業の必要性・・・市の遊休資産である貸家の「空き家」の発生状態が進んでいる。中山間部には不動産業者が少ない。一方で、市全体で高齢化、人口減少が進んでいる。空き家が多い。県外などからの移住者の増加を図りたい。

事業の内容・・・①「空き家情報バンク制度」の運用、〇空き家の調査、登録 〇移住希望者の相談受付、空き家の紹介、

②空き家活用シュミレーション事業の委託 〇「住宅改修プラン」の提供

③移住フェアへの出展 〇東京、大阪で行われる移住フェアに出展し、移住希望者の相談受付を行う

予算・・・予算は、ここ3年を見ると、H20年298万円、H21年377万円、H22年473万円と増えている。空き家バンクの登録件数は、6⇒26⇒34と増加、移住者数は、19⇒17⇒34件と推移している。県内で空き家情報バンク制度を実施しているのは、12団体(自治体)。12団体の合計は312件。(そのうちH市は105件)

仕分け人からの主な質問

仕分け人「これは放置空き家か」 説明員「空き家になっている市の遊休資産と捉えている。お金をかけられないので、市場に出ることができない物件」

仕分け人「人口減少が前提と思うが、対象空き家の把握はどうしている?」 説明員「固定資産税の納付書に、空き家となっている資産があればこういう制度がある、とお知らせしている。でも、市内に空き家は3,000件以上ある。そのうち登録は累計106件、今年度34件…。」

仕分け人「5年間で人口が4,000人減少。社会減か、自然減か」 説明員「社会減だ。大学などがない。会社もない。こちらの希望は若い世代の転入だが、相談の多くはリタイア組だ。成果としては新規就農した人、地域のリーダイーとしてコミュニティーをまとめてくれる人などがいる。定住フェアで移住した人4件。」

仕分け人「PRの方法は」 説明員「難しい。雑誌『田舎暮らし』に載せてもらったり、小冊子を作ったり」

仕分け人「この事業の売りは何か」 説明員「あと10年、20年住める住宅を提供したい。安い物件は不動産業が扱わない。役所だと手数料が要らない。住宅改修プランを提供する。※これは「社会資本整備総合交付金(国交省)」を使って県の建築士協会に委託している。」

などの質疑応答があった。

評価

<判定人>の判定は、13人の判定人のうち、不要3人、(廃止を含めて)再検討5人、県、国など広域で事業化する0人、要改善5人、現行どおり0人 という結果になった。[本]要検討、要改善が同数だった。この場合、コーディネーター役・構想日本研究員の意見を採り、(廃止を含めた)要検討が採られた。ちなみに私も、(廃止を含めた)要検討のところで手を挙げた。

これを受けて、(研修職員で構成する)仕分け人チームの評価は、不要2人、要検討1人、県・国0人、要改善4人、現行どおり0人となり、要改善が採られる

[本]見ていると、どちらかというと、職員は“要改善”を採る傾向にあると思いました。ここが外部仕分け人、市民判定人と違うところで、職業柄(廃止、検討)は失敗の行政評価につながる「ダメだし」と捉えがちなのかもしれません。『模擬仕分け』という訓練の場で市民感覚、民間思考を叩き込んでほしいところです。

そういう意味でも、『東京財団』(構想日本)の意図する自治体職員のセンスアップ、スキルアップは重要なことで、研修に参加している意欲ある職員に期待するところ大なのです。

<評価>の肝

仕分け人、コーディネーターから出た意見は次のようなものだった。

「『税金』を400万円(国県から26万円、特会から26万円、一般財源420万円)投入して13件=人口が36人増えたのが実績。1件について30万になる。住民にメリットがあるのか」 「自治体が欲しいのは、本当は若年層だ。しかし、若年層が求めているのは住居じゃない」 「この事業では若年層を呼び込めない」 「空き家対策と人口減少対策を並列に並べているが、本当の原因は人口減少。原因を分析→対策→行政は税金を投入して事業化する流れで、どう住民にメリットがあるのか、明確にできなければ税金は使えない」 「目的ターゲットがボケている。空き家対策なのか、セカンドライフ作りなのか。続けていくと、税金が漏洩していくかも」

 こういう事業は、予算(金額)のほかに、数字に表れない人件費もけっこうかかっているものです。「定住人口」を増やしたい自治体はもちろん多い。やろうとしていることが大命題なので、行政現場では反対意見は通らないのでしょう。だから外部の眼が必要なんです。

また、「人口増加策」や「定住人口増加」が、首長選挙のマニフェストだったりすると、達成率にこだわるあまり、突き進むことになる。

交付金・補助金も実は税金なのに、住民にも行政にも、その感覚がない。交付金、補助金は国からもらってくるものと思ってありがたがっていると、「たこが自分の足を食っちゃっている」状態。


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