チンパンジーの行動 [子育て支援]

両親にかわいがられた経験が生む慈しみ行動

雑誌「WEDGE」に面白い記事が出ていました。(元)上野動物園園長-中川志郎さんのお話です。

今、政権は、子育て支援や、高校教育の無償化、保育所増設などに力を入れている。それ自体には賛成なんですが、それらはおしなべて親の都合といえる。生まれたばかりの子どもが絶対的に必要としている母親(の確保)を、遠ざける政策になっていないか」と前置きして語っておられる。

「チンパンジーは、4年おきに子どもを産むそうです。子どもは、4歳になると、次に生まれてくる弟や妹を母親から借りて子守をします。弟や妹がいないときは、何も命じられていないのに、よその母親のところに行って頭を下げて、赤ちゃんを借りるんです。チンパンジーには、育児書も道徳の時間もありません。道徳や倫理は頭で考えるものではなく、自然発生的にしみこんだものが表に出るんです」

両親にかわいがられた経験が、違う個体をいつくしむ行動につながっている一例でしょう。

「本当は、人間こそ、最初の密着状態を必要としているんですよ。人間の赤ちゃんは、霊長類の中で相対的に大きく生まれるし、圧倒的に完成度が高く生まれてくるんです。しかし、生まれて1年はほとんど動けず泣くだけです。母親にはものすごい負荷です。

人間は、生まれた瞬間の視覚、臭覚、聴覚などの感覚は、圧倒的に完成度が高い。発達した感覚で、ケアしてくれる母親のことを、1年間ですごい勢いで吸収し、母親を通じて家族など絆を結んだ人が投影されていく。これで社会化していくんです」「一方で、父親はそこにいることが大事。存在そのものが安心感」

人間は、動物とは違うと思う傲慢さ

「人間は、生物としての子育てを忘れている。その背景は、体外脳つまりテレビや携帯やパソコンによって巨大化する体外脳についていけないと人間でないといわんばかりの風潮である。中川氏は、生物的学習と生態的学習の先に、体外脳があることだという。<体外脳>とは、個体が蓄えた知識、経験が、その個体の死とともにリセットされるのではなく、他の人を通じて外部に蓄積されるものを指す。

人間が長い進化の結果として存在するのだということを忘れ、人間は動物とは別であるという傲慢さを抱いていることも大きな原因だ。動物の行動は、親から子に縦の線で大事なものが受け渡されることを示唆している。」

親の責任を、学校や社会に丸投げしている風潮、それを支持すれば票になるという政策に、強烈なアンチテーゼを投げかけている。中川氏の話にドキッとさせられた。(政策、政治、政局を論じる前に)どうやら私たちは、ちょっと立ち止まって考えなければならないようです。--「WEDGE」4月号--

自分が本来すべきことが、お金を払えば誰かに委託できる、人間は、そんな思想やシステムを生み出したことで、かえって子育てに悩み、汲々としてしまっているのではないだろうか、と記事は投げかけていました。


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