〈高速無料化〉は、ポピュリズムの極み [国政]
高速道路会社の総売上は、2.6兆円
全国の高速道路は、分割民営化されて、6社(東日本、中日本、西日本、本州四国、首都高速、阪神高速)で運営されています。総売上げ額は、2.6兆円だそうです。 このうち、首都高速、阪神高速の売上合計は、0.5兆円。それを除いたほとんどが、残りの4社(旧日本道路公団=東日本、西日本、中日本、本州四国)の売上げです。
これら売上げ額の主なものは、高速利用料金収入です。この料金のうち、4社の料金を無料化するというのです。
40兆円の借金を抱えている高速道路6社
一方、高速道路6社は、40兆円(東日本、中日本、西日本の合計は30兆円)の借金を抱えています。かつて、道路4公団が、採算の取れない道路を談合によって作ったり、道路清掃、パトロールなどを関連会社に丸投げして、長年に渡って作ったものです。これを分割民営化により、きちんとした(民間会社のやり方で)「債務返済機構」を作り、売り上げ2,6兆円の中から、45年計画で返済していくことになったばかりでした。
返済計画が消えた
その財源は、売上げ(高速料金)です。具体的に言えば、東日本、中日本、西日本の高速道路会社の売上げ2兆円のうち、1.6兆円を返済に当てていくことであり、返済は4年目を過ぎたところです。このまま、あと41年で完済するはずでした。
素人が考えても、これを無料化することにより、返済の財源がなくなることがわかります。それまで、これら特殊法人には国の予算が投入されてきました。それが、やっと税金を投入せずに、入ってくるものから支出(返済)をするという、素人にもわかる「キャッシュフロー」が出来たのに、です。
2兆円が入ってこない
無料化で、2兆円が入ってきません。東日本、西日本、中日本の借金30兆円は返済できません。これらは国債にもぐりこませなければならないと思われます。そうすると、毎年元本5600億円、利子6600億円、合計1兆2600億円を60年間税金で払わなければならない状態に戻るわけです。もっといえば、維持管理費もかかるのに、入ってこない分、持ち出しになるのです。この合計は、別に毎年4000億円ほどかかるのだそうです。
公平の論理からもおかしい
高速道路を使う人は、1割にも満たない。その他の国民は、「無料化」に関係ないのに、「無料化」のために税負担が求められてくるわけなんです。つまり、喜んでばかりいられないと思うのです。
しかし、先日の鳩山総理の「所信表明」では、マニフェストを掲げるだけで、具体的な数字が出てこなかった。でも、今は、とにかく「期待度」が前面に出ているわけで、不安材料は後ろに回っています。民主党でも自民党でも、政権はどちらでもいいんですが、私はキャッシュフローくらいは説得力のあるものを提示して欲しいのですよ。
ただ、単に料金収入が2兆円減るということでは、イメージがわかないから、国民は「へぇー」てなモンですが、借金を返済できなくなるのですよ。その付け替えが「国債」に隠れて増える、ということは明らかです。民間会社なら、入ってくるものがあって、その中から出るお金があるんですが、国の政策になってしまうと、「予算」だけがあり、<決算>がなくなってしまう...。つまり、足らないものは「国債」に化けてしまうから、現実感がなくなってしまう。
民営化になった高速道路が、また<国営>に戻るという意味をよく考えたい。 残る「借金」返済のための財源をどうするのか、どこにもぐりこませるのか、知りたい。
ダメ押しで失礼ですが
ダメ押しにもう一言。 高速道路の無料化で経済効果を期待しているというのですが、当然、高速道路に渋滞が起こり、時間が読めなくなります。これは経済効果のマイナス点です。 また、これにより、二酸化炭素の排出量が増え、マイナス25%と大見得を切った「排出計画」との整合性をどうするのか、疑問が山ほど。
さらに、「土日祝日どこまで行っても1000円」の自民党政権時代の「高速道路」政策に、国が助成金までつけて普及させたETCは、無用の長物になってしまいます。 あの時、みんな競争でETCをつけ、その利益は天下り団体を潤したと聞いていますが。
勝てば官軍
これは、国だけではない。地方においても選挙の公約なんて、勝てば官軍、どうにでもなるよ、というような扱いです。具体的な数字なんて出てこない。 特に、地方自治体なんて、マスコミが騒ぐわけではないので、消しゴムで消すようなもの、になってしまうのです。
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